コラム

【連載】発達障がい ~第2回~

1.前回のまとめと今回のコラムについて

前回は発達障がいの概要について書きました。主な内容は以下の通りでした。

・発達障がいとは、「発達」の「障がい」であり、生まれてから社会で自立して生活できるまでの過程の中で、当事者や周囲が著しく困った時に初めて障がいとなる
・発達障がい者が抱える「特性」とは、「そのものだけが持つ性質」という意味で、一人一人違う

このように発達障がいとは、診断される時期も、その特性や対処法も一人一人異なる個別性の高い障がいであることをご紹介しました。前回のコラムを見て、就職をする、継続していくことは中々ハードルが高いと思った方もいらっしゃるかもしれません。しかし、入念な準備や定期的なメンテナンスを行っていけば、就職すること・継続して働くことは可能だと考えます。

今回のコラムでは、発達障がいを抱える方の就労への準備について説明していきたいと思います。

2.職業準備性

何事も始めるためには準備が必要です。職業リハビリテーションでは、「個人の側に職業生活をはじめる(再開も含む)ために必要な条件が用意されている状態」職業準備性といいます。この職業準備性という考え方はピラミッドの形でまとめられています。

図1 職業準備性ピラミッド
(高齢・障害・求職者雇用支援機構 平成30年度就業支援ハンドブックより引用)

健康管理:
体調管理全般を指します。食事・栄養の管理、通院している場合は服薬管理も含みます。休まず仕事に行くためには、最低限の体調管理ができる必要があります。

日常生活管理:
基本的な生活リズムや移動能力、余暇の過ごし方を指します。昼夜逆転の生活では朝から仕事があった場合、時間通りに仕事に行くことが難しくなります。

対人技能:
挨拶や謝罪、感情のコントロール等、自分以外の誰かとコミュニケーションを取るための最低限の技能を指します。

基本的労働習慣:
働く上で求められる報告・連絡・相談などのコミュニケーション技術、最低限の身だしなみ、一定時間仕事に耐えうるだけの体力等を指します。

職業適性:
その仕事を行うために必要な知識や技能等を指します。

この図がピラミッドになっているのには理由があります。職業準備と言うと、職業適性や基本的労働習慣をイメージされる方が多いですが、これらが準備出来ていても、体調管理や日常生活管理という土台がないと継続して働き続けることはできません。これは発達障がいを持つ、持たないに限りませんが、どれだけ優秀でも、体調管理や日常生活の管理ができなければ、その能力を発揮することはできないのです。当たり前のことですが、「休まず出勤できる」ということは働く上で非常に重要です。

 

3.準備を助けてくれる人・場所

職場では職業適性を高めることは支援してくれますが、それ以外の準備は基本的に就職前に行う必要があります。とはいえ、それらの準備を一人で行うのは非常に大変です。以下は準備を助けてくれる主な機関を職業準備性ピラミッドに沿って並べました。

・健康管理:家族、精神科医療機関(外来診療等)等
・日常生活管理:家族、精神科医療機関のデイケア等
・対人技能:精神科医療医療機関のデイケア、就労移行支援等
・基本的労働習慣:就労移行支援、障害者職業センター・ハローワーク等の就労準備プログラム、ジョブコーチ等

4.今回のまとめ

今回は就労する準備について書きました。これから仕事をしたいと思ってらっしゃる当事者の方は、職業準備性ピラミッドが積み上げられているか、どこかグラグラしていないか、ご家族や信頼できる支援者と話し合ってみて頂けると良いかと思います。一方で、採用をされたい企業の方は、このピラミッドが積みあがっているかどうかを面接等で確認して頂けると良いかもしれません。
特に、健康管理と日常生活管理を軽視しないことが重要だと考えます。

次回以降は、実例を用いて、発達障がいの方の就労準備、就労の継続について深めていきたいと思います。

【第1回目のコラムはコチラ】
【第3回目のコラムはコチラ】
【第4回目のコラムはコチラ】

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